佐藤大使のコスラエ出張
佐藤大使は、10月19日から22日までコスラエ州へ出張しました。 出張の目的は、コスラエ州で実施されている廃棄物管理プロジェクト、及び、農業開発プロジェクトを促進することでした。これらプロジェクトは何れも本年度の草の根・人間の安全保障無償案件です。
(なお、当地で発行されている英語紙カセレリア・プレス11月11日―24日版では、「コスラエ州をクリーンに、グリーンに」(Kosrae Goes Clean and Green)というタイトルでこの出張の模様が掲載されています。ホームページ英語版をご覧下さい。)
【佐藤大使のコスラエ州出張報告】
私は、11月19日から22日までコスラエ州へ出張しました。出張の目的は、①コスラエ州で実施されている廃棄物管理プロジェクトのフェーズII、をスタートさせること、及び②農業開発プロジェクトの農機具の引渡しを行うことでした。これらは、何れも本年度の草の根・人間の安全保障無償案件です。
コスラエ州では従来から、我が国草の根無償プロジェクトが着実に実施され、成果を上げていることが高く評価されています。今回、草の根2件の式典には、コスラエ州ウエルバッハ知事が出席しましたが、同州知事からは心から感謝の表明がありました。
1.コスラエ州
コスラエ州について説明します。 コスラエ州はミクロネシア連邦の東端にあり、面積112平方キロ・メートル(ポンペイ島の三分の一)、人口8千人(実勢では7千人と言われている)の美しい島です。コスラエ州を訪れると何時も、「小さな理想郷」と言う言葉が浮んできます。
「小さな理想郷」コスラエの風景
ミクロネシア連邦の首都のあるポンペイ島からは500キロ・メートル離れています。コンチネンタル航空アイランド・ホッパー便(グアムとハワイの間のミクロネシア連邦・マーシャル諸島の島々を飛びとびにホッピングするように運航されているので、この愛称が付けられています)だと約1時間ですが、ポンペイに戻ってくるには一泊か三泊しなければ折り返せないので、不便です。
小さな州ではあっても独自の言語コスラエ語を話します。コスラエ州知事は、ミクロネシア連邦内の他の3州の知事も同様ですが、州の行政については極めて強い権限を持っており、実質的な首相格です。小さな独立国のような感じがします。
コスラエ州財政は基本的には米国の財政援助金(コンパクトマネー)に依存しています。州内にはこれといった産業もなく、恒常的に財政赤字問題を抱えています。最近では、中国の援助により、学校建設(約4百万ドル)などの大型プロジェクトが進行中で、多数の中国の技術者・労働者を見かけました。また、大型の民間漁業プロジェクトも検討されるなど中国のプレゼンスが大きくなっています。
我が国は従来から、コスラエ州の漁業振興を図るために無償資金援助・技術協力などの援助を行ってきました。現時点では、これらに加えて草の根無償プロジェクト2件が進行中で、また、JOCV(田口佳奈さん・小学校教諭)1名、シニア・ボランティア(奈田俊さん・臨床検査技師、浜崎丘さん・環境教育)2名が派遣されて協力を行っています。
コスラエ州の「廃棄物管理プロジェクト」は大きな成果を上げて、今やミクロネシア連邦内のモデル・プロジェクトとなっています。
また、「農業開発プロジェクト」はとても有望です。駐日大使の経験のあるアリク副大統領(コスラエ州出身)は従来から、「日本の一村一品運動を見習いたい」と言っていますが、これからきゅうりなどの野菜の出荷が始まれば、ミクロネシア連邦内でモデルとなる「一村一品」に発展すると期待されています。
コスラエで育った野菜(農業開発プロジェクト)
2. 廃棄物管理プロジェクト・フェーズII(本年度草の根・人間の安全保障無償資金協力「コスラエ州中央廃棄物処理場機材計画」)
10月20日午前、ウエルバッハ州知事の立会いの下に本件計画の贈与契約(G/C)署名を行いました。
既に、フェーズI、として、2006年度草の根無償「中央廃棄物処理場改善計画」で福岡方式の廃棄物埋め立て処理施設が完成しています。本年3月、アリク副大統領の立会いの下に本使からウエルバッハ州知事への引渡し式が行われています。
今回の協力は、このプロジェクトのフェーズII、として、我が国が供与した無償資金で中古のゴミ回収車2台購入して、コスラエ州全域にある「オープン・ダンプサイト」(廃棄物投棄場)を閉鎖、右の福岡方式廃棄物処理場に集約して処理をしようとする計画です。
コスラエ州は4つの行政区画の市(municipality)に分けられています。前回のフェーズI、では、このうちのレラ市のオープン・ダンプサイトが閉鎖されて、代わりに福岡方式廃棄物処理場が建設された訳ですが、残りの3市のオープン・ダンプサイトについてはゴミを運搬する手段がないためになかなか閉鎖に踏み切れませんでした。それが今回、ゴミ運搬用の回収車が供与されることになるので、いよいよ、コスラエ州全域のオープン・ダンプサイトが閉鎖され、全州を網羅した廃棄物管理システムが完成することになります。
また、その後(11月)、JOCV短期シニア・ボランティアとして廃棄物処理の専門家浜崎丘さんが派遣されて、本件プロジェクト・フェーズII、を指導しています。 今や、コスラエ州の廃棄物管理システムはミクロネシア連邦全体で「モデル・システム」となっています。国際協力機構(JICA)でも力を入れて技術協力を行っています。連邦各地の環境担当官が同州を訪れて研修を行っています。ポンペイ州やチューク州の指導者は、自分たちの州でも是非、福岡方式による廃棄物管理プロジェクトを行いたいので、日本の協力を得たいと要望しています。本件廃棄物プロジェクトは援助額としては決して大きな規模ではありませんが、とても効果的な支援の「成功例」になっています。
3.農業開発プロジェクト(本年度草の根・人間の安全保障無償資金協力「コスラエ州レラ市農業開発支援計画」)
コスラエ州では長年にわたり、日本の篤農家の濱田信三郎さんが私財を使って農業指導を行ってきました。これまでに、濱田さんの指導で開墾された畑1.5ヘクタールではきゅうりやキャベツなどが栽培されて成果を挙げています。
濱田さんと、開墾された畑
今回の草の根協力は、濱田さんの指導を受けてきたレラ市の農業協同組合に対して、中古の農業器具(バック・ホー、トラクター、耕運機など)を供与して、コスラエ州で農業振興を図ろうとするものです。
20日午後、既に、新たに開墾中の農地(計画では3.5ヘクタール)に赴き、ウエルバッハ州知事の立会いの下に私からレラ市農協理事長のマニックスさんに対して農業機材の引渡しを行いました。
ミクロネシアでは、人びとは農業のような厳しい労働を嫌って、農業には見向きもしないと言われていました。 ですが、日本のミクロネシア統治時代には農業開発が行われた実跡があります。コスラエ州でも大規模な畑作地があったと言われています(現在は、密林に覆われていて痕跡は見えません)。そのような歴史的な経緯から、農業について良い想い出をコスラエ人は持っていると言われており、事実、家庭菜園もかなり盛んで、今回受けた印象では、農業に対するコスラエの人びとの熱意は本物と思えました。なお、現在の開墾地では、濱田さんの他、本邦から農業ボランティアとして山中幾夫さんと谷垣雅広さんが滞在、農業指導を行っていました。 ミクロネシアは太平洋地域の中でも極端に野菜の摂取量が少なく、そのために糖尿病などの生活習慣病の罹患が多く出ています。糖尿病のために手足を切断している人も多く見受けられます。コスラエ州での農業が振興して、食生活や習慣の改善に向けた啓発活動を通じて皆が野菜の摂取を増やせば、これらの疾病が減少することも期待できます。正に「人間の安全保障」確保の試みです。
4.その他
21日、コスラエ島西側の外れの村落ワルン(Walung)を訪問しました。コスラエ州では島内を一周する道路がありません。ワルン村までの道路は南から時計回りで悪路を約一時間、四輪駆動車でなければ通れません。そこから、コスラエ島の北に位置する空港に向かっての約8キロは道路がありません。通常、ワルン村へのアクセスは北側から約15分間、ボートで海路を行きます。コスラエ州を除くミクロネシアの3州にはそれぞれ、Outer Islandといわれる離島が数多くあります。コスラエ州には離島はありません。でも、今回滞在中に面会したコスラエ州選出のウェリー連邦議会外交委員長は「コスラエ州には離島(outer island)はないが、ワルンは実質的な離島だ」と言っていました。陸の孤島なのでしょうね。人口は約300人です。
今回、ワルン村が行政区画に入るタフンサック市の市長さんの案内で、海を見下ろす丘の上の小学校を訪問しました。珍しい訪問客が来たと言うので、児童たちが喜んで歓迎してくれました。
歓迎してくれたワルン小学校の児童たち
コスラエ州側では、コスラエ島を周回する道路を作ることや環境温暖化の影響で侵食が進んでいる海岸線(それと海岸を走っている道路)の保全を図ることを望んでおり、日本からの協力を希望していました。










